メーカーやスケートショップが、ベアリングのABEC数値が高くなる程性能が良いと嘘をつく理由




以前、なぜABEC数値がスケートボードの速度や耐久性、スムーズさなどに全く関係が無く影響のしようが無いのかを解説しました。

ABECという団体が定めた基準によると、ABEC3だろうがABEC5だろうがABEC7だろうがABEC9でさえも、スケートボードでベアリングを使用している限り、ABEC数値によって性能差が出る事はありません。

むしろスケートボードとは全く関係ない数字なんですね。

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ベアリングのABEC(エイベック)とは何か解説。スケートボードの速さや耐久性に一切関係ない理由

2021-06-19

ここで1つの疑問が必ず頭をよぎると思います。

「じゃあ、なぜベアリングメーカーやスケートショップはスケートボードに全く関係無いABEC数値を、あたかも数値が高ければ高い程高性能のように謳っているのだろうか?」

その答えの背景には、スケートボードパーツ業界のちょっとした歴史やマーケティングが関係してくるので、記事にまとめました。

高いABEC数値=高性能、とメーカーやショップが嘘をつく理由

世界中のスケートコミュニティでも、この謎はよく一言で片づけられています。

“It’s just marketing”

答えはシンプル、その方がベアリング(と、それに関連するパーツ)が売れるから。

“世界に溢れる人の手で作られた物のほぼ全てはマーケティングされた物” だとよく言われますが、まさしくこのマーケティングという一言に尽きます。

つまり必ず誰かしらが、利益を得る為に市場調査し、需要と供給のバランスから特定の層に売れると判断し製品化されたという事。売れる見込みが無ければ誰も製品化しようとは思わない訳です。

冒頭で貼った記事でも解説しましたが、インターネットが使用出来て英語の読解能力があれば、ABECスケールと検索するだけで、「ABEC数値はスケートボードには全く関係ない」との結論を比較的誰でも導き出せる訳です。

ちょっとインターネットで調べれば誰でも嘘だと見抜ける事を、わざわざやる理由が他にありますか?

(現にABECという団体が定めたレーティング方法では、ABEC3がABEC7よりも優れたパフォーマンスをする可能性もある、とご丁寧にWikipediaにも記載されているのです。)

メーカーやショップはABEC数値がスケートボードには関係ないと分かってスケーターを騙しているのか?

ベアリングメーカーは結構グレーな部分があって、企業によってはABEC数値が高いベアリングを “誤差が少ない” といった表現に留めていたりします。

そうすると、間違った情報ではないので誰からも叩かれません。

「よりスピードが出る」とか「よりスムーズにスケートボードが進む」なんて明記したら嘘になってしまうので、そうした宣伝文句は大々的に記載しないメーカーが多い気がします。

ショップに関しては、スケート文化が進んでいる海外でも「パーツは販売するけどABECレーティングはスケートボードには関係ないよ、その数字は気にしないで」と教えてくれるショップにも何度か立ち寄った事がありますし、ショップによるとしか言いようがないですね。

日本国内の場合がちょっと特殊で、本当にABEC数値が高い程高性能だと信じてしまっているショップも中には存在するんですよね・・・。

極端な言い方をすれば、仮に分かってやっていたとしても仕方ない部分もあると思います。

どのお店も売り上げが欲しいのは当然です。より多くの売り上げを立てる為にメーカーの謳い文句や、あたかもABEC数値が高い事で高性能だと宣伝する事も、彼らの仕事になる場合が十分にあります。

(売り上げが無ければお店も経営出来ませんからね)

1つだけ確かな事実としては、日本国内のスケートボードショップサイトやスケートボード情報サイトでは、ベアリングやABECに関しては間違った情報しか出てきません。(冒頭の僕の記事を除いては)

(個人のブログでたまに明確な根拠やソースの提示が無く「ABECはスケボーには関係ないらしい」と予想しているニュアンスの記事は見つかりました)

海外のショップのサイトだと、お店によっては何故ABEC数値がスケートボードに全く関係が無いのか解説までしてくれているページもちょこちょこあるんですよね。

でも、日本語のページではそんな親切なページは全くありませんでした。

「他のお店もやっているから、自分達も分かってても売り上げの為にABECについてデマを流してしまおう。」といった日本人特有の右にならえ精神からなのか、本当にそう信じてしまっているのか日本のショップやサイトでは本当に判断が難しい所です。

これも実際に存在するスケートショップのオンラインストアページやスケートボード関連情報サイトを紹介しながら、デマがどのように拡散されているかいくつかの事例を記事にまとめました。

ベアリングやABECに関して嘘だらけのスケートボード情報サイトやショップサイトまとめ

2021-08-10

Bones Bearings(ボーンズベアリングズ)のような人気有名メーカーもABECとスケートボードの関連性を公式HPで否定

“ABECスケールやABECレーティングはスケートボードには一切関係無い” と公式HPで解説までしてくれているのが、世界的にも最も有名で最も人気のスケートボードパーツメーカーの1つ、ボーンズベアリングズ。

日本人スケーターの間でも、ボーンズベアリングズは有名ですし彼らの商品は人気じゃないでしょうか。

オンラインでも実店舗でも、ABECとスケートボードの関連性をちゃんと否定してくれる良心的なスケートショップがあるように、数は少ないですが製造側にも正確な情報発信をしてくれるメーカーもあるのです。

ベアリングメーカーでもここまで創業者がしっかりと初心者が騙されないよう解説してくれる企業も珍しいですよね。

他のメーカーやショップがABECを推していたら、ちゃんとスケートボードとの関連性を否定する事でスケーターからの信頼も得られ、他と差別化出来ますからね。

これは本当に良い戦略だと思います。

他に同調しない代わりに、Bonesは独自のスケーターアクションを考慮しレーティングをしたSkate Ratedというレートシステムを開発し、そのレートを基にベアリングを開発しています。

これも冒頭に貼った記事内で紹介しているので詳細は書きませんが、気になる人は是非記事をチェックしてみて下さい。

ABEC表記をしているベアリングメーカーが全て悪なのか?

これも極端な言い方ですが、法に触れ犯罪とみなされなければ人を騙そうがお金を稼いだ者勝ち、といったアイデアはどの国のどこにでも存在します。

ABEC表記を全面に押し出し、各種ABEC数値のベアリングを製造販売しているメーカーが全て悪かと言うと、それも難しい。

彼らのマーケティングにまんまとやられる消費者に責任も多少はあるでしょうし、ABEC数値と共に売り出されるベアリングが、必ずしもスケートボードのベアリングとしてクオリティが悪い訳でもありません。

現に日本産のNINJAベアリングシリーズもABEC数値をつけて販売されていますよね。

(個人的にはNINJAベアリングの雷神がコスパよくておすすめです)

なぜ誰もメーカーやショップの嘘に声をあげないのか

これも疑問に思う人も居るかも知れませんが、答えは “証明する事も反証する事もまた難しいから” です。

まぁ暗黙の了解と言ったら良いのでしょうか・・・。

例えば「今存在するスケートボードベアリングの中で、最速のベアリングはどれですか?」と聞かれたら、そんなベアリングありません。

なぜなら世界の誰も検証が出来ておらず、証明する事自体も困難だからです。

どんな綺麗な路面のスケートパークでも、スケートボードで滑れば常に振動が発生します。

スケートの仕方やスタンス、プッシュやパンプの仕方で、ベアリングにかかる負担や加圧される方向も変化します。

人によってボードもパーツもライダーの体重も違う可能性がある中、全てのベアリングの性能比を一律に測定する方法は現時点では存在しないのです。

スケートボードパーツは昔から極端なマーケティングがあった

上の項目で述べたように、誰1人として特定のパーツ性能を数値や形として証明出来ない環境がスケートボード業界には常にありました。(現在でもこれは変わりません)

その為、言ってしまえばやったもん勝ち的な雰囲気でメーカーが様々な悪事に手を染めたパターンも存在します。

スケートボード歴が長い人で、ベアリングやそのメーカーに詳しい人は知っている人も居ると思いますが、スケートボードパーツの中で、特にトラックとベアリングに関しては昔からメーカーが誇張し詐欺だとスケーター達から訴えられる案件が結構ありました。

過去にあった酷いケースでは、某四葉マークのベアリングが謳っている材質とは全く異なる材質でベアリングやボールを製造し販売していたり・・・。

某トラックメーカーがあえて素材を誤解するようなネーミングで販売したり・・・。

(気になって調べてみたら、Youtubeにもしっかりと嘘を暴いた検証動画が海外スケーターによって投稿されてました。)

誰も明確に証明出来ないと、そりゃ海外であれば余計に適当にパーツ作って販売する企業も出てきちゃいますよね。

ABEC数値を使ってメーカーやショップが嘘をつく理由まとめ

  • ABEC数値が高い程高性能だと謳うのは単なるメーカーのマーケティング
  • ABEC数値が付くベアリングのクオリティが悪い訳ではない
  • 特に日本国内では、ショップによって分かって販売している場所と、そうでない場所が存在する







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