日本の初心者スケーターの中には、未だにベアリングのABEC(エイベック)数値が高い方が回転がスムーズで速くスケート出来ると誤解している方がまだまだ多い。
そんな壮大な誤解を解く為にABECという数字が何を表し、何故スケートボードには全く関係が無いのかを、実際にABECという組織が世界に公表している情報を基に以前解説しました。
そして、何故そうした嘘で塗り固められた現在のスケートボードマーケットになってしまっているのかも別記事で解説。
今回の記事では、実際にそうしたデマをネット上で流し続けている、スケートボード関連サイトやスケートショップのオンラインストアページを見ていきましょう。
貴方の周囲にこれらのデマを鵜呑みにして信じてしまう初心者スケーターが居たら、是非真実を伝え注意してあげて下さい。
ベアリングやABEC (エイベック)についてデマを拡散している or 参考にならないページ例
NOLLIE SKATEBOARDING (ノーリースケートボーディング)
まずは、嘘で嘘を塗り固めたような最高にヤバいデマを拡散しているこちらのページから。
この記事のサムネイル(上部の画像)にも使っているように、ベアリングとABECについての情報が空想の物語じゃないかと思う程のデマ情報が、このページ内で公開されています。
HPのトップページも見易く、特にトリックに関しては技毎にガイドがあったりと、一見丁寧な案内をしていそうなだけに非常に勿体無い。
https://www.nollieskateboarding.com
Youtubeチャンネル登録者も5.88万人(この時点で)と、全く少ない訳ではない人数。
そしてこちらが問題のページ。
ABEC (エイベック) は、ベアリングの回転のしやすさを決める規格です。
と、冒頭からデマなんですよ・・・。
(ABECが何を決める数値かまだ知らない人は、冒頭に貼った記事をよく読んでABECとABEC数値の意味を理解しておきましょう)
で、3,5,7の3種類という部分だけはあっているものの、次にまた
数が大きいほどスピードが付きやすいです。
と、これまた一部の国内初心者スケーターが信じている謎の迷信。
最初から早いベアリングを使うのは危険なので3からスタートして~
と記載していますが、現実世界ではABEC3ベアリングがABEC9と同等、またはそれ以上のパフォーマンスをする事なんて多々ある事。
そしてどちらにしても、スケートボードで使った瞬間にベアリングのABECの意味は無くなるので、全く関係無い呪文を唱えているようなものです。
極めつけに、下の矢印の図。
あたかもABEC1が1番スピードが遅くABEC9が1番速いと誤解させる図となってますが、現実世界ではまずそんな事はありません。
ABEC規格とABECレーティング(数値)の意味を本当に理解していたら、まずそんな発想には至らない事は初心者以外のスケーターなら知っているはずですね。
ABECという規格を作った委員会が、そもそも一言もそんな内容を公表していません。
ノーリースケートボーディングのこれらのベアリングとABECに関する情報だけは本当に悪質で、こんなデマは他のどこのページでも見れないレベルです。
Alley Oop (アーリーウープ)
次にスケートボード専門店、アーリーウープのオンラインストアページ。
因みに僕もたまにスケートボードパーツでお世話になるお店。
https://passion-sfa.co.jp/alleyoop
アーリーウープの場合は、デマと言うよりも全体的に濁した感じの表現。
ベアリングとABECについての記載がこちら。
ABEC規格の説明文中の “品質を示す値” という表現には若干疑問は残るものの、数値が大きいほど精度が高いベアリングという部分だけは間違いではない。
ただその直後に
初めての方はABECの低いベアリングでも十分お楽しみ頂けます。
と、ノーリースケートボーディングと同様、あたかもABEC数値が低い=初心者向けでABEC数値が高い=上級者向け、と誤解させるような表現はNG。
当然ABEC3だろうがABEC9だろうがABEC数値はスケートボードには全く関係無く走行性能に一切影響しないので、この文章は本当に謎です。
ABECの無いベアリングに関しての説明も曖昧。
ABECという委員会にベアリングを送って測定してもらえば、どのレーティングに属するのか知る事は出来るので、
設計の都合でABEC規格での比較ができないためです。
と言うのは嘘になってしまいます。
例えばBONES BEARINGS (ボーンズベアリングズ)のような一部の有名メーカーは、あえてABEC規格を謳わず表記もしません。
“ABEC数値は全くスケートボードとは関係ない” と、消費者がベアリングメーカーのマーケティングに騙されないよう公式HPでABECをちゃんと否定しているからです。
意味のない数字を推して商品を売り出さない事で、消費者から信頼を得ているのがボーンズの戦略という事。
なので、正確にはABEC値を公表していないのではなく、そもそもレーティングに出してないというのが正解。
ブランドごとに設計思想が異なるので~
と言うのはその通り。
アーリーウープさんはお店側が本当にベアリングとABECに関して知識が無いだけなのか、罪悪感や良心からあえて言葉を濁して表現しているのか、どちらにも捉えられるので微妙なところですね。
SK8Boarders (スケートボーダーズ)
次に紹介するのはスケートボーダーズという、国内では珍しいサーフスケート専門オンラインストアページ。
スケートボーダーズというページの名前よりも、URLのサーススケートドットネットの方で覚えている人も多いはず。
ホームメニューからベアリングページへ飛んでいくと・・・
商品を紹介する文章がぶっ飛んでいる事に気付きます。
Abec規格最高水準を誇る当商品は、とてもよく回る上、リーズナブルな値段となっております。
はい、ここでもスケートボードの走行性能に一切関係ないAbecレーティングの数値を強調し、あたかもAbec数値が高い程スケートボードの走行スピードが速くなるといった誤解を生む文章。
これはNGですね。
スケートボーダーズに関してはノーリースケートボーディング程悪質ではないものの、完全にスケートボード界に蔓延るマーケティング文章そのままといった感じ。
記事冒頭でリンクを貼った2つ目の記事でも触れた通り、この場合は分かって消費者に嘘をついてきているのかは不明。
ベアリングやABECに関して嘘だらけの情報サイトやショップサイトまとめ
いくつか実在するページを例に挙げてきましたが、冒頭にリンクを貼った記事中でも解説している通り、嘘だと解っているものの競合他社との競争に負けないよう、仕方なくデマを拡散しているページやショップもあるでしょう。
特にスケート文化が進む海外では、Abecを謳い売りにするベアリングメーカーはマーケティング色が強いと判断され、スケーター達から信用されていない事が多いので、ボーンズベアリングズのようにHPで “Abecはスケートボードの走行性能に全く影響を及ぼさない” と公表しているメーカーが人気な理由の1つでもあります。
各メーカーの本当の思想など誰も知り得る事は本当の意味では不可能なので、自分でパーツ毎の特性を知る事と品質を見極める経験や目が必要になってくると思います。
もちろんそこに至るまで多少の失敗はあるかも知れませんね。
スケートボード関連の記事を書き始めてからは、稀にお問い合わせフォームから質問を頂く事が増えたので、(特にベアリングとAbecについて)経験豊富な上級者ではありませんがお役に立てる事があればお気軽にお問合せ下さい。