スケートボードのウィールを手で回転させて回転時間を計測し、回転時間が長い方がベアリングの性能が良いと壮大な誤解している人がスケート初心者に非常に多い。
「○秒以上回転しないと性能があまり良くない」
「○秒以上回転しないベアリングは使わない」
なんて事を言いがちな初心者の方達へのリマインド!
ウィールを手で回すテストでベアリングの性能を判断する事は、まず不可能です。
そしてその回転時間は何の参考にもなりません。
この記事では、何故そのテストがベアリングの性能には無関係なのか、理由を交えながら解説していきます。
海外のスケートコミュニティやスケーターの間では常識なので、是非この機会に覚えておきましょう。
ウィールの回転時間がベアリングの性能とは無関係な理由
トラックについたウィール(ベアリングのついたウィール)を手で回して回転時間を計測しても、その時間の長さは全くベアリングの性能とは関係が無い理由をピックアップしていきます。
ウェイトが乗っていないと空回りするベアリング
ウィールの向きが縦でも横でも、ウェイトの乗っていないウィールを回すとベアリング内部で何が起きるかと言うと、英語でSkidding(スキッディング)と呼ばれる現象が起きます。
どんな現象か説明すると、ベアリング内部のボールがどこにも触れず空回りしている状態です。
ボールがインナーレースにもアウターレースにも触れず動くので、この時間は摩擦がほとんど発生しないんですね。
人がボードに乗ってベアリングにウェイトが乗ると、まずそんな空回りするような動きにはなりません。
必ずボードや体重の重さからくる負担に潰され、インナーレースの溝のどこかしらにボールが押し付けられてます。
この時点で、人の体重が乗った状態と全くウェイトが乗っていない状態でのベアリングの回転に雲泥の差が出てしまいますよね?
空回りしているベアリングの動きと、実際に人が乗る際のベアリングの動きは全く異なる別物となる。
故に、空回りしてどこにも負担がかかっていない状態のベアリングの回転を見た所で、実際に乗った時の性能なんて何も分かりません。
オイルベアリングとグリスベアリングでは回転が全く異なる
以前、オイルベアリングとグリスベアリングの違いやそれぞれの特徴をまとめた記事を書きました。
オイルベアリングは手でウィールを回転させると比較的長時間回転しますが、実際に乗るとプッシュはグリスベアリング程伸びません。
一方で、グリスベアリングは手でウィールを回転させても短時間で止まってしまうのに、グリスが馴染んだベアリングを組んで実際に乗りプッシュすると、プッシュの距離がオイルベアリングに比べて伸びます。
これはベアリングにウェイトが乗った事ではじめて出る差です。
この事から、単に手でウィールを回した際の回転時間が長い=よりスムーズ、より距離が進む、より性能が良い、といった事はありません。
仮に2種類のオイルベアリング同士やグリスベアリング同士を比較する際にも、全く同様の事が言えます。
回転時間は性能に比例しません。
手でウィールを回転させて分かる事はアライメント
手でウィールを回転させる事で見える事が唯一あるとすれば、ウィールとトラックとベアリングのアライメント(alignment)です。
言い換えると、その3つのパーツがどれだけ真っすぐちゃんと整列されているか。
本来設計されたポジションにそれぞれが位置しているか、回転させてブレていないかを確認する程度の事は出来ます。
他にはベアリングのオイルやグリスが切れていないか回転音を聞いたり、シールドがぶれていないか見たり、まぁ簡単な点検 & 確認作業といった所でしょうか。
スケートボードにおいてベアリングの性能差なんかよりも、このアライメントの方が走行には圧倒的に大きな影響を与えます。
(ここが揃ってないと、どんなに性能の良いベアリングでも台無しだから)
- ベアリングがウィールのベアリングシートにしっかりと水平垂直にフィットしているか
- ベアリングを組んだウィールがトラックハンガーに対してちゃんと垂直に回転しているか
- トラックハンガーのベアリングを受ける壁が、アクスルやウィール、ベアリングに対して垂直か
こうした事が重要になってきます。
アライメントが良くないとどういった現象が起こるかは、また別の記事で解説していきます。