ストリートやパークでのトリック用ボードは別として、スケートボードでクルージングする場合は誰もがパンピングを練習したり経験するのではないだろうか。
最近はスケーターの人口も増え、未だにパンピングの間違った練習方法としてトラックのキングピンをゆるゆるにするといったスーパー非効率で危険な方法を紹介しているスケーターがYoutube等でも増えたので、注意喚起として記事を残します。
まず大前提としてトラックのキングピンナットを極端に緩めて走行する事は、絶対にやってはいけない。
多くの国のスケートコミュニティでもプロアマ関係なく、これは共通認識である。
大けがや死亡事故へ繋がる可能性があり、しかもその練習方法ではスピードが全く出ないどころかパンピング本来の感覚が身に付かないので非常に非効率的だからだ。
(そもそも上達の効率が良いちゃんとした方法でパンピングの練習をしていたり、パンピングの原理を理解していれば、まずこれが絶対にやってはいけない事だと分かるはず)
理由を知らずに正に今キングピンをゆるゆるで走行している人、パンピングを練習しているのにスピードが全く出ない人、ひたすら無意味な練習を積み重ね時間を浪費し遠回りしている方は、是非事故に遭ったり時間を無駄にする前に参考にしてみて欲しい。
パンピング(日本ではポンピングと言われる事もある)とは?
そもそもパンピングって何?という方の為に念の為ざっくりと説明。
パンピングとは、身体を上下左右などに振りながら重心をシフトする事で素早く小さなターンを生み出し、その動作を繰り返す事で発生する向心力を利用して一度出した速度を更に加速したり、その速度を維持したりする走行方法である。
※ 板をpump(パンプ)して進む走行方法、パンピング。一部の日本人がポンピングと言うが、スケートボードコニュニティにおいて世界的にはパンピングとして認知されているので、以降この記事でもパンピングで統一。
パンピングの種類もパンピングの仕方も様々なものがあるので、この記事では省略します。
キングピンをゆるゆるにしてパンピングしてはいけない理由
さて、ここからが本題。
キングピンをゆるゆるにしてスケートボードで走行しては絶対にいけない!と言われる理由が主に以下の3つ。
- ゆるゆるの状態で乗る事の危険性
- パンピングの効率が落ちて本来のスピードが出ない
- パンピング本来の感覚を身につける事が出来ないので上達しない
順番に解説していこう。
ゆるゆるの状態で乗る事の危険性
バランスが取り難く不安定な走行
大怪我や死亡事故に繋がる可能性、まずこれが第一。
とにかく危ない走行となってしまい、キングピンが極端に緩い事が原因の事故や怪我、死亡事故も過去に世界中で報告されている。
ボードを左右にリーンする際、通常はブッシュを通してトラックが徐々に傾き反発感を感じながらカーブするところ、キングピンが緩過ぎると片方から反対側へと一気に重心がシフトする事で、バランスを崩し易く転落する可能性が一気に高くなる。
スピードワブルを起こしやすい
そして死亡事故に繋がる原因として断トツに多い、このスピードワブル。海外では死亡事故に直結し易い事からデス・ワブルなんて呼ばれている。
そして極端に緩いトラックは、スピードが出れば出る程スピードワブルを起こし易く非常に不安定。
ゆっくりとカービングするようなスタイルなら比較的緩めのセットアップでも良いかも知れないが、ある程度スピードを出すクルーザーであれば走行自体が困難になる。
代表的なスピードワブル対策方法はいくつかあるが、これはまた別記事で解説することにしよう。
走行中にトラックが外れたり壊れやすくなる
転落だけなら、むしろまだマシかも知れない。
もっと酷い事になると、走行中にキングピンナットが外れトラックが分解するパターンがある。
スケートボードに付いているナットなんて、滑っていれば全て必ず緩んでくるもの。
だからこそ、トラックのナットもウィールのナットもキングピンのナットも、必ずある程度時間が経ったら締め直したり、締め具合をチェックする事を怠ってはいけない。
当然極端にキングピンのナットを緩めるという事は、トラックハンガーがベースプレートから外れるまでのマチがより少なくなる。
よって、常に少し緩むと外れてしまうといった状態でボードに乗っている事になる。
また、キングピンのナットを極端に緩めるとハンガーの動きがブッシュから大きく外れて動くようになるので、トラックハンガーやブッシュ、キングピンなどの各種パーツに必要以上に負担がかかる為より摩耗したり壊れやすくなる。
パンピングの効率が落ちて本来のスピードが出ない
リーンして踏み込んでもロスが大きくリバレッジが効かない
トラックのキングピンのナットをゆるゆるで走行している人に限って、「プッシュしてから踏み込んでいるのにパンピングが上手く出来ない」とか「パンピングしているのに速度が全然出ない and/or 維持出来ない」なんて言う。
そんなの当たり前だ。
トラックのキングピンをゆるゆるにセットしていたら、いくら踏み込んでもロスが大きく力が伝わらないので全く加速しないのだから。
この画像はクルーザーのフロントトラックをゆるゆるにセットした状態。
トラックが傾く度にボードサイドとロードサイドどちらのブッシュにも触れていない時間がある、つまりその瞬間の力はどこにも伝わっていない。
トラックのキングピンが極端に緩い状態が一体どういった状態かと言うと、一言で言えばくねくねと動くリップスティックボードやブレイブボードに近い状態。
(さらに上の画像で解説した通り一定時間力のロスが発生しているので更に状態としては非効率)
例え幼稚園児が乗ろうが、必ず少しずつ前進する事は出来るが、大きなリバレッジをかける事が出来ないのでスピードは全く出ない。
踏み込んでも踏み込んでも、その踏み込んだ力が常にトラックからウィールに伝わらず逃げてゆく状態なので、加速出来ない。
パンプする回数が激増する為、必要以上に体力を消耗する
キングピンナットがゆるゆるで力が逃げていく状態で乗るという事は、相当左右に素早く激しくリーンして小刻みにパンプしないと加速どころか前進もしない。
ちゃんとキングピンをある程度締めて力が伝わる状態であれば数回のパンプで進む距離も、倍以上の回数パンプしないといけないので、ただただ無駄に体力を消費し非効率になる。
パンピング本来の感覚を身につける事が出来ないので上達しない
上達しないとタイトルで書いたが、より上達に時間がかかると言う方が正確だろう。
既に解説した通り、ボードのエッジを踏み込みリーンする際リバレッジを効かせても、その踏み込んだ力が常に逃げていては、その力や負担がトラックのブッシュを通して反発する感覚をいつまで経っても経験出来ない。
つまり、より大きな力や反動でより大きなリバレッジを効かせる事でどんどん加速してゆくパンピングの感覚を、いつまで経っても養えないという事になる。
キングピンのナットをゆるゆるにした状態でいくら練習しても、自分のパンピングがボードをちゃんと前進させるスタイルのものなのか、確認のしようもない。
必然的に上達からはどんどん遠のいていく。
時間をただただ無駄に費やす事になるので、非効率な練習と言えよう。
世界中のスケーターが危険行為として注意喚起している
プロアマ問わず、様々なスケートコミュニティーで必要以上にキングピンナットを緩める事は、危険行為として世界中のスケーター達が注意喚起している。
これはいつの時代も変わらない。
最近は特にYoutubeで有名になった海外スケーター達も配信しているストリーミングやアップロードしている動画内で、初心者のスケーター達へ向け、いかに非効率で危険な事かを解説している。
SNSやYoutubeなどの日本人スケーターがゆるゆるセットアップで練習をおすすめしても、非効率的で非合理的なので、絶対に真似をしない事。
単に上達が遅くなるだけで、時間も体力もわざわざ無駄にする必要はない。
パンピングをしたいなら、体重やスタイルに合ったブッシュに交換する
キングピンナットを緩めてガタガタなトラックでパンピングをするなら、まだ柔らか目なブッシュに交換する代わりにしっかりとキングピンナットを締めた方がパンピングもし易いし距離も進むし加速もする。
ボードについてくる純正のブッシュでも決してパンピングする事が無理な訳ではない。
ただ、より自分の体重や乗り方に合ったセットアップにしたいのであれば、それに伴ってブッシュの形状や組み合わせや硬さも調整する方が、確実に快適な乗り心地に辿り着けるのでおすすめ。
ある程度色々な種類や組み合わせを試したら、自分の好みのスケートスタイルに合ったセットアップに固定し慣れるまで練習する事が望ましい。
このセットアップに関しては、パンピングの種類や好みのスタイルによって異なるので、また別の記事で解説します。